「What?」

夕焼けの街道に、日に照らされる金の髪が目に入った。

見覚えのある後ろ姿を、思わず呼び止めて腕を掴んだが、
呼び止められた当の本人は俺を怪訝そうな顔で見てる。


人間違い?

――あ、そうか、そうだよな。


ガキの頃、イジメられっこの俺を救ってくれたあの人が
何年も経った今でも、あの頃と変わらない姿で居る筈が
ないもんな。

今はもう、いい歳になって、
もしかしたら結婚して子供も居るかもしれない―――。

 

そうだよ、もうあの人を探すのは止めよう。

 

 

思い出との訣別の意味を込めて、俺は
その人の腕を放した。

 

 

『悔しかったら強くなりなさい。オトコでしょ?』

遠い日の、あの人の声が聴こえる。

あちこち傷だらけになって、泥と涙塗れになった
俺の顔を拭いながら、
夕日に反射する金色の髪をなびかせた女の人は
そう言って俺の肩をポンと叩いた。

膝をついて、わざわざ目線を合わせて話す女の人の顔は
夕暮れの陽炎にぼやかされ、思い出せない。


俺、今はもう15歳になって、空手部の主将をやってる。

この調子だったらインターハイだって夢じゃないんだ。
ガキの頃の俺には考えられなかった事だ。

 

――強くなったんだよ、俺――

 

心の中で、
もし、あの人を見つけたなら伝えたかった
言葉を、これが最後のつもりで呟いた。



 

「ソーリ、ソーリ」と言いながら
駆け足で走り去っていく少年の背中を、

金色の髪をした女が、寂しげに微笑んで
見つめていた事を、

彼は、知らない。

 

 

 

 

99題目 『何か?』
冒頭の部分しか題に沿ってないという・・・。

 

即興SS書いて痛い目みた気がする
今日この頃。

アクリルカラーで塗ってますが、
粗い所、フォトで誤魔化してます・・・。
足が変だー。あと顔が野郎みたいだー。

H15.10.4UP

 

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