皆さん、初めまして。

ワタクシ、パンドら君と申します。

 

さっそくですが・・・

 

ワタクシのご主人様は、とても優秀なお方です。

 

  詳しくは存じませんが、何でも『サンタマリア』とか言
うそれはそれは位の高い『スクール』に世界最年少の
6歳という若さでご入学され、しかもその中において
最優秀という素晴らしい成績を収められた凄い
お方でして・・・・

え?

・・・ああ、『スクール』と云いますのは『シャーマノイド』
を養成する学院の事を一纏めにこう呼びまして、
『サンタマリア』はその中でも屈指の・・・

 

えぇ?



『シャーマノイド』もご存じ無い?

 

そんな、



じゃあ貴方は本来死すべき時でない時に

ご自分が亡くってしままれたら、

 

一体誰に生き返らせて

もらうおつもりなのですか?

 

 

 

 

 

アンチネクロ道中
〜すなわちラン・アウェイ〜

 

 

 

ドロップアウト

 

 

おめでとう、エリシェンク=M=セレブレン18歳O型マスターコードT−F−4649。

遂に貴女は、正式な『シャーマノイド』という、誇るべき地位を獲得
する事になります。

明日、議会から正式発行された認定証が貴女の指先に触れた瞬間から、
自らの職業を『シャーマノイド』と公言する事を許可します。

――――おめでとうエリシア、アタシも友人として鼻が高いわ。

――――先を越されちまったな、エリー。やっぱお前には敵わねえや。


――――良かったですわね、エリシェンク。貴女の夢がようやく叶って・・・。

 

 

祝辞の声と拍手が飛び交い、麗らかな日の光差し込む緑豊かな庭園の中、
恐らくその場の主役であろうエリシェンク=M=セレブレンは
秀麗な眉目を吊り上げて、この場には最も似つかわしくない
嫌悪の表情を顕にしていた。

自分の昇進を祝う、もしくはねぎらいの言葉を贈る旧友達に、
彼女は見向きもせず、大幅な足取りで庭園を後にした。

 

 

 

 

――不快極まりないわ、とてもとてもとても――

雑踏で賑わう街道を、小柄な女性が大股で歩く。
あどけなさを残したその端正な顔の左目には、何故か
眼帯が当てられていて、残った右半分の表情は不機嫌そうに眉が
寄せられており、女性は――エリシェンクは
賑わう人々の波を逆らう様にすり抜けていた。

近くに居た者なら、彼女の毒づく声も聞こえただろう。

腰までにも達する銀の髪をなびかせ、その身に羽織っている
丈の長いコートをバタつかせながら、肩で切りつつ早足で前進。

その様子は人々の視線を集め、やがて人込みの間に
自然と一本道が出来るほど凄まじいものだったという・・・。

 

 

 

 

おや、
ご主人様、どうやらお帰りになられたご様子
ですね?

あれれ・・・何やら凄い形相。

何かあったんですか、ご主人様。

 

適当に散らかった広くも狭くも無い部屋に、ご主人様とこ
エリシェンク=M=セレブレンは帰ってきた。
そして、一息付く間もなく部屋周りを大きく歩きながら、衣服や小道具
を拾い回り始めたのだ。
両手一杯に集まったそれを『トランク』に詰め終えると、また同じように
部屋を巡回する―――その動作が4サイクル目に入った時、
『あの・・・』と声を掛けようとしたパンドら君に硬い響きの、ハスキーな女声が飛んだ。

 

「喜びなさいパンドら君君。
私の、おそらく人生最大の記念日が到来したわ。」

とてもつまらなそうにエリシェンクが言った。

本当につまらないと思っているというより、これは彼女
独自の口調である。

 

・・・・ご主人様、記念日ならそんな
怖いカオなさらなくても良いじゃないですか。
それに、何ですか、その水臭い呼び方は。

それに、さっきから部屋中の衣服やら小道具やらを
かき集めているのは何故ですか?

「記念日だからよ。」

エシシェンクは拾っては詰め込む作業を止める事もなく即答した。

 

 

いや、そんなこと言われましても。
ワタクシ、そういった間接的な
言い回しを解読する事はちょっと
苦手でして・・・。

ん?
ちょっとお待ちになって下さい?

今日は確か、海老の月鰻の日。
・・・明日、鯛の日は・・・3年に1度、
シャーマノイド認定証が議会の方から
発行される日では・・・!

ハッ!!
そういう事なのですね、ご主人様!

ご主人様は認定証を議会から授かる
権利を有する事を認められた、

つまり、そういう事なのですね!

おめでとうございます、ご主人様。
・・・そしてよく頑張られました。
このパンドら君、心よりご祝辞申し上げます・・・。

幼き頃より『シャーマノイド』となる為に、
どんなに努力されたことか、ワタクシはよく

知っております。

本当に・・・本当にご苦労様で
ございます。

 

・・・でも何故、そんなまるで家出でもするかの様な
大量の荷物を詰めていらっしゃるんですか?

 

途端に饒舌になるパンドら君の言葉をとりあえず
最後まで聞いてから、エリシェンクは、



「パンドら君君・・・私は君の、そんな勘の鋭さに
心底敬意を評したい気分よ、嬉しいわ。」

と、やはりつまらなそうに言った。


あ?有り難うございます・・・って
そんな大きな荷物をお一人で持って何処へ・・・?

 

エリシェンクはゆっくりとした動作で顔を上げた。
夕焼けの光に曝された右半分の顔は、よく見れば薄っすらと
笑みを浮かべ・・・。

 

―――荷物を抱えたご主人様はワタクシを驚愕
させるには、十分過ぎる事を言われたのです
―――。

 

「この街を出るのよ。
認定証なんていらないわ、シャーマノイドになんて仕立てられる
前に、さっさとずらかっちゃいましょ。」

 

え?

 

ご、ご主人様は、つまりシャーマノイドになられる
おつもりが無く、認定証を頂く前に、
この街を去る・・・・そういう事ですか!?

 

信じられない、と言うように声を裏返らせるパンドら君とは裏腹に、
彼女は涼しげな顔で、丈長のコートを翻した。

 

「そう言ってるのよ、パンドら君君。今日は冴えてるのね。」


 

 

 

 

 

――――かくして、ご主人様とワタクシの・・・長い長い旅が始まったのです・・・。

ご主人様に、どういうご心境の変化が有ったのかは、ワタクシは
今の所存じ上げません・・・。

しかし、ワタクシはこれでもご主人様を慕っておりますから、
ご主人様が行かれる所へなら何処へでもお供する次第でございます。

でもご主人様・・・知っておられますか・・・

シャーマノイドになり損ねたシャーマノイドには、過酷な運命が
待っているという事を・・・・。
――――

 

 

 

 

あと・・・ワタクシの事は、パンドら君とお呼び下さい。

君付けなんて、水臭いですよ、ご主人様。

・・・語感もちょっとよくありませんし・・・。

 

 

 

 

ドロップアウト 終

グッドモーニンアンデット へ続く・・・んかい!?

 

 

INDEX二代目

世話期間
H15.6.19〜

 

 

・・・付いて来られますか(笑)・・・拙い文章で申し訳ない。
BY AUF

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送